年下の男の子

就職先は、ジーンズOK、時差出勤OKの職場でした。普段はとてもフレキシブルな職場ですが、締め切りが迫っていたら徹夜となることも度々。でも、さすがに徹夜明けはお休みがもらえるので、始発電車が動き出したのを確認してちょっと身支度を整えてから、出勤ラッシュを横目に下り線に乗車して帰っていました。忙しい月は、そんなことが、週に1~2度はあったと記憶しています。

ある時、帰りの電車で寝落ちしてしまった私。いつもは目は瞑っても半分起きた状態なのか下車予定の駅まで寝ていることはなかったのに、その時は男の子の「電車、戻っちゃうよ!」の声で目が覚めました。電車は終点に既についており、折り返しとなっていたところでした。

「ありがとうございます!」

慌てて電車を降りた私にその男の子は、「これから学校?」と…。え!ちょっと驚きましたが、大学受験の時に高校受験生と間違われた、超童顔の私。乗っていた電車の終点には私服の高校もあるので、そこの生徒だと思ったのでしょう。

自分が社会人であることを男の子に告げると彼は、自分は私服の高校の学生であること、たまにこの電車で私を見かけること、何年生だろう、もしくは大学生?浪人生?と思って見ていたことを私に伝えると、「明日の土曜日、ヒマ?」と聞いてきました。

予定はないけど…とつぶやく私にその子は、「じゃあ、遊びに行こう!この駅の改札で1時!」と言い残して、走ってその場を去ってしまいました。

あっけにとられていた私ですが、「あれ?高校生の男の子と遊ぶって、彼と何歳違うのよ?私、もう26歳の大人だから、高校生の未成年の男の子と付き合ったりしたら警察に捕まっちゃうよ?!あり得ない」と考え始めていました。

家に帰って落ち着いて考えれば考えるほど、高校生の彼氏というのはちょっと難しいと思うのですが、連絡先も聞いてないし、本当に明日、駅前で待ってたらどうしよう…。すっぽかすのもかわいそうだし、おちょくられてるんだったらノコノコ待ち合わせにいくのも嫌だし。うーん。でも、電車の中で度々私のことを見たことがあるのなら、やっぱり、行った方がいいかな…と思い始めていました。

そして次の日、待ち合わせに5分くらいわざと遅れていくと、本当に彼が駅の改札前で待っていました。

「こんにちは…」

「本当に来てくれるなんて嬉しい!どこに行きたい?ゲーセンとかは禁止されてるけど、映画は大丈夫だから!」ああ、高校生だ…。

ドラマや少女漫画だったら、スラリとした大人びた高校生の彼に…なんて展開になりますが、取り立てて大人びてもいないし、「お母さんに優しい、いい子なんだろうな」と思わせるような彼。私のような(彼から見たら)年増があまり馴れ馴れしくすると、なんとなく彼のお母さんに申し訳無いような気がして、少し遠慮気味に彼との1日デートが終わり、やっぱり高校生は歳が違いすぎると思い始めた頃です。彼が、「年下だけど、あなたの彼氏になれたらいいなって思っています。可愛いなって、思いながら電車の中で見てました。いつもパッと降りちゃって見失しなっちゃうから声をかけられなかった。でも、昨日は声をかけるチャンスだと思って…」とポツポツと語り始めました。

年下の男性に惹かれる女性はたくさんいますが、とにかく可愛いのです。母性本能でしょうか。「なんか可愛い。じゃあ、ちょっと付き合ってみてもいいかな…」なんて思いはじめてしまった私。

しかし実際に付き合ってみると、やっぱり社会人と高校生の差は大きかった。なにしろ、彼が行きたいところは「お姉さんは、その辺りはもう卒業してしまったよ」という場所。彼の友達やその彼女と会うと、お肌の曲がり角に差し掛かった歳を感じる始末。

決定的だったのが、彼と週末に会うと、月曜日提出予定の宿題が終わってないことが多いことに気が付いてしまった時。二人っきりで遊ぶだけなら良かったのですが、彼の友達と会うと「明日の宿題やった?」「やってない」という会話に…。そのため、次第に、会ってすぐの合言葉が「宿題やった?」となってしまいました。

いちおう大人として、高校生の本文である勉学をおろそかにさせるわけにはいかない、と思ってしまった私は、遊ぶ約束をしていても彼の宿題が終わっていなければ「じゃあ、今日は宿題の日にしようか…?」と言うようになってしまったんです。

すでに、家庭教師と生徒状態。料理の出来ない若い妻をもらった年上の男性が、しばらくすると、生活していくには可愛いだけじゃ駄目だと思うことがあるらしいですが、年下の男性に対しても、やはり、可愛いだけじゃ駄目。

お互いに社会人という立場で会って入れば、多少の歳の差は乗り越えられたのかも知れません。私が、歳の差をあまり気にしすぎたのかも知れません。また、はじめは憧れで付き合い出したけど、実際に付き合ってみると、彼も「あれ?」と思ったのかも知れません。

彼から次第に連絡が来なくなり、私からも特に連絡をしなくなった。お互いに、もう終わり…と感じていたのだと思います。

数年前ニュースを見ていたら、フランスのマクロン大統領の奥様は、彼が高校時代に知り合った同級生のお母さんだった人だと、触れている番組があり、ふと彼のことを懐かしく思いました。高校生だったマクロン氏に24歳年上の女性が魅力を感じ続けるということは、よほどの大物感が当時から漂っていたのでしょうね。

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